くすの木歳時記

初春のお喜びを申し上げます

謹んで初春のお慶びを申し上げます。
 皆様、ご健勝で新年をお迎えの事だと、心より念じております。拙院、平成5年に鍋島に開業して、早いもので23年と半年。開業当初に親御さんに連れられて来院していた「当時の」お子さん方が、ご自分の子供を連れてこられるようになりました。「赤ちゃんだった君が~っ!」が最近のうれしい話題です。
 小さな無床診療所で本当に微力で、なおかつ「アクの強い院長」ながら、今まで存続できたのも、ひとえに皆様のご理解のおかげ。「アラカン(還暦近くをこう言うそうで)」になり新年を迎えるにあたり、「過信、慢心、禁物。初心忘れるな!」と、己に言い聞かせております。
で、今年初めの話題は、珍しく(笑)ちょっと堅め?の真面目なお話で。

耳鳴りについて
 「耳鳴り」。実は悩んでいる方にとっては本当につらいものです。人口のおよそ10~15%が耳鳴りを経験し、そのうち約2割が重い耳鳴りに悩んでいるともいわれています。つまり日本の人口の約2~3%、約300万人の人が耳鳴りに苦しんでいる。ところが現在、いわゆる西洋薬では耳鳴りの適応が取れているものは1種類のみ。どの製薬会社も開発に取り組んでくれません。
 最近の研究では、耳鳴りの発生と悪化には脳の働きが関係していると考えられています。耳鳴りを経験している人の多くに聴力低下の傾向がみられます。つまり耳鳴りと難聴には密接な関係があるということなんですね。
 まずは
聴こえのしくみについて 
外からはいってきた音の波が鼓膜を振動させて、その振動が聴こえの神経に伝達されます。神経はその信号を脳の「聞こえの領野」に伝える「電線」みたいなもの。脳はその信号を受け取って「音」に変換するんですね。
 無響室といわれる全く音の無い部屋では、誰でも耳鳴りは聞こえているといわれています(生理的耳鳴り)。ただ通常は日常生活では周囲の「生活雑音」に紛れて、ほとんど自覚することはありません。それが激しくなって生活の妨げになった時点で「耳鳴症」となる訳です。
 耳鼻科医として比較的気が楽なケースは、山越えや飛行機搭乗からの気圧の変化によるもの。これは、鼓膜と聴こえの神経の間の空洞の陰圧から通常は気にならない程度の耳鳴りが増幅されたもので、「通気」という治療(鼻に問題がある場合はその治療も必要になりますが)で簡単に治ります。
 難しいのが、聴こえの神経からの耳鳴り。  
難聴からの耳鳴りは脳の過剰、異常反応
 通常脳は、聴こえの神経からの信号を受け取りそれを解析する役目。ところが、聴こえの神経からの信号が弱い状態、いわゆる「難聴」になると脳が変化して電気信号を強くしようとします。「暴走」です。  
   
場合によっては、脳自身が勝手に信号を出すようになってしまう。ですから、聴こえの神経の機能低下(難聴)からの耳鳴りの場合、機能が低下した周波数に一致した耳鳴りの事が多いです。
 じゃあ、どうしたらいい?
理論的には、聴こえの神経の機能が回復すれば問題ないのですが、発症から時間が経過していると厳しい。(突発性難聴などの急性疾患の場合、約1か月で回復不能といわれていますし、加齢に伴う難聴は「若返り」の薬がないのと同じで・・・)。
 だから、どこの製薬会社も手を出そうとしないのでしょうが・・・
ただ1社、「最近開発に取り組んでいます」という話はあります。
じゃあ、どうしたらいいの?!」
「気にしないように」と言うのは簡単。でも実際苦しんでいる人は「気にしないようには出来ない」から辛い。実は私も10年くらい前から耳鳴り。今は結構大きくなって生活雑音くらいではかき消されない程度。でも診療に支障がでる訳でもなく、また大雑把な性格(笑)なもんで、「あぁ、今日も元気に鳴ってる、あたし生きてる」みたいな。
それでも、そのうち支障が出たらどうしようという不安は抱えています。
 よく処方されるのは安定剤とかですが、意外と漢方が効く場合も(メーカーさんごめんなさい)。
また、難聴がひどい場合は、補聴器装着でおさまる場合も。これは理論上納得。脳に正常な信号が到達するようになれば、脳は自己発火しなくなる。ただ、
補聴器の適合は非常に難しいです!メーカーより、あわせてくれる補聴器屋さん次第。くれぐれもご注意下さい!
 補聴器の適合に関しては、またまた複雑な話になりますので、いずれこの場でと。
 
結局、どうしたらいいの?「あきらめないこと」でしょうか。例えば肩こりが原因で、肩こりの薬で軽減したり、前述のように漢方で軽減したり。漢方の場合どのような場合、どんな人にどの漢方を選ぶかは結構選択が難しい。でも「漢方は長く飲まなければ効果は出ない」はウソ。合うか合わないかの判断は2週間かと。医者と向き合って話していくうちに、「あっ、そういえば」とご自身で原因に気付くことも多々あります。万人の耳鳴りに対しての特効薬はないと思ってます。
 医療は皆さんが快適に日常を送れるためのもの。そのためには、自己中になってとことん医者に食い下がっていいのではないでしょうか。拙院、少しでもそのお手伝いができればと思っております。 
「くすの木クリニックのピーターラビットです。  
  ご心配をおかけしましたがリハビリ頑張って、
 無事包帯もとれて、またこうやって子供を
   背負えるようになりました。
応援してくださった皆様、ありがとうございます。
今年はくれぐれもけがのないよう過ごしたと・・・
 皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。」